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Oh! 舞 God 〜私たちのTurning Point

「めぐみさんいっちゃいましたねぇ・・・」

新米天使103が何だか物悲しそうに言うと

「行っちゃったね」

と、おバカな受付担当

「幸せになれるといいわね」

と、美人な受付担当

「はいはい、仕事仕事!」

と、リーダーがぴしゃり

「はぁーい」

 

それぞれ仕事に戻る。

リーダーがパソコンに向かい今日の”大変な一日”の報告書を作っていると

「ねぇねぇ〜まだ仕事なのぉ〜〜」

とチャラい神様

「見れば分かりますよね」

きりりと睨む

「いいじゃんいいじゃん〜」

リーダーはさらに睨む

「む〜。じゃあいつもの店で待ってるからぁ〜お仕事終わったら遊ぼーよー」

「・・・・しょうがないですね。終わったら考えてみます」

「やった〜〜や〜ったやったやったよ〜。じゃあまたね!!」

 

天使103と受付担当の二人はその様子をこっそり見ていた

タイミングを疑いながら受付担当二人に背中を押され天使103がダダダッと

リーダーの前に押される

「あの・・・・」

「何?」

「あの・・・・私からは聞けないですぅ(泣)」

しょうがないなと美人受付が

「先輩と神様ってどういう関係なんですか?」

三人は目をキラキラさせながら、リーダーを見つめる

 

「な、なんでもないわよ」

「うっそ〜。絶対なんかある」

 

「昔、色々あったの!」

「へぇ〜」

あれは私が天使学校を卒業してすぐの頃

天使には色々な仕事があって

皆さんが想像するようなふりふりとかフワフワ〜な格好で魂を運んだりとかしちゃうビジュアル担当と

スーツをきて、ここTurning Point Stationで、くじ引きの手伝いとか、受付とか、事務処理とかする担当があって

私は後者。

死者の生きてきた頃にいいこと、人の役に立つことをどのくらいしたとか、悪いことをどのくらいしたとかを点数化する仕事を主にやってた。

 

そんなある日

「えっ、私がですか?」

「そう、急にビジュアル担当が足りなくて、、今日だけ!!!お願い!」

「あ、、、、はい」

「よかったぁ〜ちゃんと教育係もつくし、優秀なあなたなら大丈夫!!!ふりふりも似合うよ」

「はぁ。。。。」

「じゃよろしく〜」

なんだか落ち着かないなぁ。。。スカートとか久々。。スースーするなぁ。

「おっはよ〜!!!わっおーめちゃめちゃかわいいじゃん〜」

「えっ、あの・・・」

「オッス!俺、君の教育係のK330ッス」

「え?・・・・あっ、おはようございます。よろしくお願いします」

なんだこの人。。。チャラい。。。チャラすぎる。。何なんだ?

ってかずっと舞ってるみたい。テンション高いな。。

こんな人に教わることなんてあるの?

マニュアルさえあれば大丈夫か

こういうタイプは無理!

 

「おっと、早速仕事だにゃ〜」

パソコンに向かう。

私が担当することになった案件は

7歳の男の子

「この年で死んじゃっても理解はできないよね。。。」

「はい」

ってか、私、、、、子供苦手。。。。

「とりあえず呼んじゃいますか?」

「あ、、はい、次の方どうぞ〜」

男の子はトボトボ歩いてくる

 

「ぼく〜お名前はタクトくんで間違いないかなぁ」

私の精一杯の作り笑いで、頑張った

 

「フン、おばさん、馬鹿にしてます?」

「え?」

「僕の名前はタクト、さっき交通事故にあって死にました」

「ちょっとまって。。。」

パソコンで確認。。。。

「(最近の子はしっかりしてんのね)」

「まぁしょうがないよ、事故っちゃったんだもん。まぁ未練とかないっす」

「は、はい。・・・で次は・・・・」

マニュアルを確認、確認

「これで、確認時効は終わり。。15歳以下の場合はくじ引き無しにパスポートを発行。。。。」

独り言満載。全部声に出して呼んでた。。

 

「ねぇおばさん?新人さん?なんか手際わるいね」

「な、(何〜(怒))・・・」

くそ生意気だな・・・・いや、いけないいけない。。

 

「では、パスポートを発行しましょうね!」

少しキレ気味に言ってしまった。。。

 

”ブー”

 

「え?」

パスポート発行ボタンをクリックしてもエラーが出る

「なんで?」

「どうしたの?失敗?おばさんパソコン出来ないの?オレこの人無理〜ねぇそこのお兄ちゃんかわってよ」

生意気なくそガキ〜

「あなたの担当は私!」

「でもおばさん出来ないじゃん。効率悪いよね?」

「ちゃんとマニュアルの通りやるから大丈夫!!!」

「なんかなぁ・・・」

「えっと・・・パスポート発行・・・」

「はやくして」

「えっと・・・えっと・・・・あった」

「んで?」

「"気持ちに嘘偽りがある場合、エラーとなる"。。。」

「は?」

「だから、"気持ちに嘘偽りがある場合、エラーとなる!!!」

「嘘偽りなんてないよ」

「でも、"噓偽りがある場合」

「あーそれはもうわかったって」

「じゃあ正直に」

「だから正直に言ったって、名前はタクト、交通事故で死んだ、未練無し」

「本当に?」

「本当だよ!」

「でも・・・本当は未練あるんじゃないの?」

「ねぇよ」

「でも、、、」

「もういい」

「ちゃんと言ってよ。そうしないとパスポート発行できないのよ」

「・・・・・・」

「ねぇ?」

「・・・・・」

なに?もう分け分かんない。

さっきまでペラペラしゃべってたのに今度はだんまりですか?

だから子供は嫌。

少なくとも私はこんな子供じゃなかった!!!

なんなの私は何でも完璧にこなしたいの!!!

マニュアル通り!!!100点を出し続けることに意味があるの!!!

「ねぇ?なんとか言ってよ」

「・・・・・」

 

もうどうしたらいいの?

「私、どうしたらいいですか?」

こんな人に聞きたくないけど

ここまで黙ってずっと見ていた”チャラい”この人に”嫌だけど”聞いてみた

でも彼は両手を上げお手上げポーズ

もう何なの?教育係でしょ!!!

もう1時間くらいたったかな?

ずっとだんまり。。。。

 

「あっ!?・・・・」

チャラい奴が急に叫んだ

「何ですか?」

「間違えたぁ〜」

「何してんですか!!!」

「テトリス!(満面の笑み)」

「は!?仕事中ですよ!!!」

「だってぇ〜〜今ダダハマり中なんです〜」

「・・・」

「いやいやレベルが上がるとついてけないのよ」

「私、ゲームとかしないんで!!!」

「えぇ〜しないの〜面白いよ〜ねぇタクトく〜ん」

「う・・・ん」

なんだよ、しゃべるのかよ!!

「ねぇねぇタクトく〜ん、ここ教えてよ〜」

「・・・いいよ」

「はぁ?今やるの?この状況でやるの?」

何なの?この状況下でゲーム?理解できない・・・

「タクトくんすげぇ〜」

「そうっすか?」

「やべぇ〜よ」

何楽しそうにしちゃってんのさ

「何が楽しいの?ただブロック積んで消すだけでしょ?こんなの数学的感覚とかで簡単に攻略できるんではないでしょうか」

「そう簡単じゃないよ〜」

「そうですか?」

いやいや何ムキになってんだ自分。私らしくない

「じゃあやってみてよ!」

「タクトくん!今君がやるべきことは!」

「出来ないんじゃないの?」

「出来ますけど、今はやりません」

「出来ないんだ、やっぱり」

「出来ます!」

「じゃあ」

「ええ〜、なんで?私の計算によると・・・」

「ヘタクソ」

「ホントホント」

「もう、、もう一回!!」

「もう25回目だよ」

「おばさんには向いてないんだよ」

「理論上は出来るの!私に不可能はないの!」

「はいはい」

「一生やってろ!」

「何?」

「ハハハ」

 

私はクリアできず、タクトくんがクリア、チャラいのもクリア

 

気がついた3時間。。。

「疲れたぁ」

「まぁ認めてもいいんじゃない?」

「何をですか?」

「何でも出来る人間なんていない!みんななんか欠点があって、欠点があるから、もろいから美しい。。みたいな」

「いや、私に不可能は・・・・」

「おばちゃん、大人げないよ」

「・・・・(笑)」

なんか笑えてきた、何こんなことにムキになってんだ

そうだよな、完璧にこだわってたけど。。。

そんな私を二人はきょとんとした目でみてた

それがまたおかしくて

「ハハハー」

それにつられて二人も笑った

何だこの感じ・・・

 

そんな時、タクトくんが急に悲しそうな顔をした

「どうした?」

「・・・・ママ」

「?」

「ママもいつも笑ってた・・・・」

さっきまでずる賢くて、子供らしさのかけらもないタクトくんが

震える声でやっと聞き取れるくらいの声で言った

「そうなんだ・・」

「ママ・・・ひとりぼっちになっちゃう・・・・」

私はパソコンのデータを見直した

「(そっかこの子母子家庭。父を交通事故でなくしている)」

「僕が・・僕が消えちゃえばいいって思ったからだ・・」

またまたとっても小さい声でつぶやいた

「どうして?」

急に大きな声で

「だってママ、忙しい忙しいっていつも僕を一人おいて仕事にいくんだ。そりゃ分かるよ。だから僕だって一人で平気だった。平気だったよ。平気だった。」

「タクトくん・・・・寂しかったんだね」

「さびしくなんて・・・・・」

 

”ピンポーン”

 

 

「え?」と驚くタクトくんとわたし

 

「ごうか〜く」

チャラ男

 

「二人とも合格だピョーン」

 

「何ですか?」

 

「だから合格!!!」

「だから何が合格です何ですか?」

「じゃあタクトくんの方からね」

「はい・・・」

「タクトくんはやっと正直に自分の気持ちを言ってくれたね!」

「うん・・・」

「だからパスポートあげちゃいま〜す!!!天国行きだよ〜」

「・・・・はい」

「パパが待ってるからね!ママも大丈夫!!」

 

よかった。最初は苦手な子供な上、生意気なこいつにイライラしたけど

よかった。

 

「そして、きみ〜かわいこちゃ〜ん」

「はい・・・」

「実はこれは君の昇進試験でもあったんだよ〜」

「え?」

「君は頭もいいし完璧なんだけど、マニュアルから離れられないのが次のステップにいくには問題でね」

「あ、、、はあ、、、」

「で、こんな試験をしたってわけ!晴れて君も昇進だよ〜ん」

「はい・・・」

「なになに?昇進したくない?」

「いや、そういうことじゃなくて、なんか・・・びっくりしちゃって」

「まぁ昇進してもがんばってねぇ〜」

「って言うかあなた何者ですか?」

「だ〜か〜ら〜K330〜」

「K330・・・」

「けーみーさんまる〜」

「けみさま?」

「神様だぁ〜」とタクト

「うっそ〜そんなダジャレ的なことあるわけないじゃない、それにこの人が?・ないない」

「だよねぇ」

 

「さぁどうかなぁ〜それよりそろそろ出発の時間だよタクトくん!」

「そうですね、タクトくん」

タクトくんにパスポートを渡す

「元気でね?」

「って死んでるから元気とかそういうの関係あんの?」

「そっか・・・でもなんか、、ほら、、、ね」

「うん!おばさんも!テトリス練習しろよ」

「っていうかね、ずっと言いたかったけど、私まだ、18ですけど!!!」

「え〜〜〜若く見積もっても25にみえるよ」

「・・・・ショック」

「ほらほらもう時間だよ〜ん」

「はい」

「じゃあな、お・ば・さん!!!」

走って行くタクトくん

「だ〜か〜ら〜(笑)」

「ほれ、出発の号令!!!」

「あっはい!それでは!出発進行!」

 

飛行機は飛んで行った。

だんだん小さくなる飛行機。

「行っちゃった・・・・」

 

「おつかれちゃ〜ん」

「お疲れさまです」

「ねぇ!お仕事おわったし、一緒にご飯でも行かない?」

「えっ?・・・・・まぁいいですよ」

大嫌いだったけど、なんか憎めなくて

「マジ〜うれし〜」

「ほんとに神様なの?」

「いや。。。まだ見習いって感じ〜」

「へぇ〜、でもいずれは神様になるってこと?」

「そういうこと!!まぁどうでもいいじゃん!たこ焼き食べたい〜」

「たこ焼き?」

まるで舞ってるような彼

「Oh! 舞 God」

「なんか言った?」

「いいえ、何も」

 

「へぇ〜先輩にもそんな時代があったんですね」

と美人受付

「神様はかわらないね」

とおバカ受付

「マニュアル先輩ですね!!」

天使103

 

「もうどうとでも言って下さい」

 

「でも、質問の答えになってなくない?」美人

「そうだそうだ」とおばか

「私たちは二人がつき合ってたとか、そういうことに興味津々なんですよ」

 

「まぁいいじゃない!あっ、ほら17時よ、帰りましょ!解散解散!!」

「え〜」

 

あれから数年後に私だけの神様になったのは

私たち二人の秘密

Oh! My God

 

 

「今日もたこ焼きかしら?」

 

 

END

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