あらすじ

「僕」は大雪の降る夜、久しぶりに再開した友達とはぐれてしまう。

辺りを彷徨い、駅への道順を聞くためと身体を少し温めるために、とあるバーの扉を押し開ける。

そしてそのピアノバーでカウンター脇のホールに古ぼけた小型のアップライトピアノで不思議な旋律を奏でる男に出会う。

彼の演奏はすばらしいもので、こんな場末のバーで弾いているのが不思議に思えるのだ。

彼の休憩中に話しかける。そして彼は子供の頃の話を始める。

　彼の名前はアルといった。

アルの父親のシドはあるうそをアルに付き続けていた。

「アルの母親は生きている。いそがしいから会えないだけだ。」と。

アルの母親はアルの出産と引き換えに亡くなっていた。

そして 「ママは、雪が降る日に戻ってくる」と。

シドは雪が降らないように南へ南へと、アルが自然に全てを理解するまで旅を続けるつもりでいた。

アルはママと言う存在を知らない。ママがどういうことをするのか、どういう人なのか―

アルは近くの公園である家族を見る。

その母親が子供にしていることは、いつもアルが自分ひとりでやっていることなのだ。

そんなとき二人の幽霊ダダ・エラソーニが現れる。その幽霊はアルにしか見えない。

いつしかアルは母親探しが日課となっていた。

婦人を見かけると、「あなたは僕のママですか？」と聞いて回った。

ダダとエラソーニにアルは聞いた。「ママってどういう人？」

二人は「アルが悪いことをしても、結局は許してくれる人さ。いつでもアルの見方だ。」と答えた。

それからアルは悪いことをしても許してくれる人を捜し求めていろんな悪戯をして回った。

そのときキキという年上の女の子に出会った。

キキはアルにこう言った。「アル、あなたはお父さんに騙されているわ。」「大人にならなきゃだめよ」

アルは心の中で復唱した。何度も、何度も。

アルはシドに尋ねた。「パパ、僕にうそついてる？」

シドはしかたがなくまたうそをついてしまった。シドは妻が死んだことを信じたくないのだ。

「ママは生きている。パパを信じるんだ。」

アルはシドを信じることにした。

そんなある日とうとう雪が降ってしまったのだ。シドは唖然。アルがはしゃぐほど気が重くなるのだった。

シドは一緒にコンビを組んでいる歌手のミナに相談し、母親を演じてもらうことにした。

その夜二人で帰ると中からアルが顔を出してきた。

シドがミナを紹介しようとしたそのとき。

「パパ、僕ね、さっき、ママに会ったんだ。」

アルの心の中で奇跡が起こったのだ。

抱き合う二人の親子。

それに涙するミナ。

奇跡的に降った雪の日に。